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東京地方裁判所 平成9年(行ウ)144号 判決

原告

後藤雄一(X)

被告

大場啓二(Y)

右訴訟代理人弁護士

橋本勇

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一  世田谷区における税務事務の内容について

〔証拠略〕によれば、本件手当支給当時における世田谷区における税務事務の内容は、次のとおりであったと認められる。

1  課税関係事務について

(一)  特別区民税及び個人都民税(これらを合わせて、以下「個人住民税」という。)の課税について

(1) 個人住民税は、その年の一月一日現在において世田谷区に住所があり所得がある者及び事務所、事業所等を所有している者に課税され、普通徴収又は特別徴収の方法によって徴収されるものであるが、その課税の具体的な事務の流れは以下のとおりである。

(2) 普通徴収によるものは、例年約一六万二〇〇〇件あり、これらについては、住民から税務署に提出された所得税に係る確定申告書を含むすべての申告書を点検し、地方税法及び区税条例に従って税額を計算し、毎年六月三〇日の一〇日前までに課税対象者に納税通知書を送達する。これらの事務は、課税第一ないし第三係の職員が担当しており、申告書の受付については、総合支所税務係の職員及び出張所の職員においても行っているが、この納税通知書による課税処分を誤りなく行うためには、国税徴収法、地方税法、所得税法、租税特別措置法、区税条例等の法令の知識、事業所得に係る売上や経費の状況も生命保険料控除に係る保険の種類などについての知識が必要である。

<1> 窓口で個人住民税に係る申告書が提出される場合には、その場で記載方法や控除対象経費についての照会や相談がされることが通常であり、平成九年度において窓口で受け付けた申告書の数は、課税課が約三万七〇〇〇件、総合支所税務係が合計約二〇〇〇件、出張所が合計約五一〇〇件であった。

<2> 個人住民税の申告については、毎年かなりの数の未申告が発生しており、これらについては、該当者に対して所得の調査票を発送し、個別に前年中の就業状態や生活費の出所状況等について確認し、申告を求める検税を行っているが、すべての未申告について検税を実施することは実際上不可能であるので、実務上、未申告者の一部についてしか実施できないという実態にある。

検税は、個人住民税未申告者に対して申告を促し、所得状況を捕捉し、税収を確保することを目的として、例年一〇月から一一月ころにかけて、未申告者のうち、年齢層を区切って二五歳ないし六四歳の稼働年齢層について行われているが、件数は概ね六〇〇〇件程度であり、課税第一ないし第三係の職員(約五〇名)が従事している。検税により申告されるのはそのうちの七割程度である。

検税の具体的実施方法は、昼間及び夜間の電話催告により申告を促し、電話調査に応答のない対象者に対して、平日昼間に、原則二名一組で訪問調査を行うというものであるが、訪問調査については、昼間は在宅していることが一般的に少ないため、本人と面接することが困難なことが多く、また、検税の過程において、対象者から苦情や行政一般に対する不満などが申し立てられることも多く、そのような苦情等に対する対応も必要となっている。

<3> 納税通知書を送達すると、他の地方自治体の住民税や所得控除額が高い所得税との比較で個人住民税が高いとの苦情が寄せられたり、具体的な課税標準、税率、課税方法等の課税内容についての問い合わせが多数寄せられ、そういった苦情も問い合わせに対する対応が必要となっている。

(3) 特別徴収の方法による個人住民税は約二六万八〇〇〇件あり、これらについては、前年の一〇月から一月にかけて、国と共同作成した所得税の源泉徴収票を兼ねた給与支払報告書及び世田谷区が作成した総括表を発送する必要があり、給与支払者からは、当年の一月末日までに給与支払報告書が提出されるので、それを担当係に入力予定数を按分して配付し、分類し内容を点検した上で、所要の調査をし、税額を計算した上で、約七万五〇〇〇人の特別徴収義務者に特別徴収税額通知書兼指定通知書及び納入書を送付して課税するという手続がとられている。また、退職所得については、当該年度において分離課税することとされているので、通常の給与所得とは別に賦課徴収されることになる。これらの事務は事務調整係及び課税第一ないし第三係の職員が担当している。なお、特別徴収の場合も、普通徴収の場合に比べれば少ないが、特別徴収税額通知書を受け取った者からの問い合わせや不服の申出がされることがある。

(4) 課税が終了した個人住民税については、管理係の職員において、直ちに収納のための手続として、調定の額(当初調定額)の確定を行い、調定が完了すると、その対象となった額については、世田谷区が管理すべきものとして確定することになるが、実際には、その後にも、例年約二万六〇〇〇件程度の新規課税がされたり、税額の変更や徴収金の減免が生じたり、特別徴収分から普通徴収分への繰入れ等の異動が相当程度存在している。このうち、徴収金の減免については、区外徴収係、特別整理係及び総合支所税務係の各職員が担当しており、その数は、例年約二〇ないし三〇件である。

(5) 個人住民税については、所得の把握等について関係が深い税務署や都税事務所等との調整、課税に係る電算処理の調整及びシステムの改善の事務を事務調整係が担当し、税に関する知識の普及・啓発を図って納税を奨励したり、徴収の実績を確認し、問題点を把握するための税務統計の作成、分析の事務を管理係が担当している。これらの事務を遂行するには、個人住民税の仕組みと運用の実態を把握しているだけでなく、その地方税全体における位置づけや国税との関連などについての知識が必要であるとともに、住民の抱いている不満点、誤解されやすい点についての十分な理解が必要とされている。

(二)  軽自動車税の課税について

(1) 軽自動車税の対象となる軽自動車とは、原動機付自転車(二輪は総排気量一二五シーシー以下)、軽自動車(二輪は総排気量一二五ないし二五〇シーシー、三輪以上は総排気量六六〇シーシー以下)、二輪の小型自動車(総排気量二五〇シーシーを超えるもの)、小型特殊自動車(総排気量一五〇〇シーシー以下)及び雪上車(スノーモービル)を指し、世田谷区内には合わせて約九万台あり、そのうち、原動機付自転車及び小型特殊自動車に係る登録や廃車の届出は、総合支所税務係が受理しているが、その件数は、登録が年間約二万四〇〇〇件、廃車の届出が年間約二万三〇〇〇件であり、その余の軽自動車税に関する事務は、管理係の職員において取り扱っている。

(2) 軽自動車税は、毎年四月一日現在で世田谷区内に定置場がある軽自動車を保有している者に対して課され、毎年五月中旬に納期限を同月末日として納税通知書を発送しているが、納期限までに納入がなければ滞納となり、延滞金が発生し、二〇日以内に督促状を発送し、一〇日を経過しても納税がない場合には、差押えによる滞納処分をすることができるものであるところ、国税である自動車重量税、都税である自動車取得税に比べ、軽自動車税については、税そのものに対する納税者の理解が十分ではなく、税の存在自体に対する不満や税の負担感が強く、様々な苦情が寄せられることが多いため、それらに対する適切な対応が求められるものである。

2  納税関係事務について

(一)  納税管理係の職員の行う事務について

(1) 収納金の領収、管理事務

窓口収納や郵送による納税に係る収納金の領収、集計及び指定金融機関への払込みは、納税管理係の職員が行っているが、証券での納付の場合は、証券の有効性の確認を行い、先日付分(先日付小切手、約束手形等)について納付委託している指定金融機関への証券の受渡しの管理、その証券が取下げや不渡りになった場合の証券の引取り、引渡事務を行うほか、国税(所得税)の還付金を差し押さえた場合の入金の収納管理、滞納者の財産の差押え、公売を行った場合の売却代金につき、国税徴収法に基づき管理し税金への充当までの出納事務処理を行い、残余金がある場合には、滞納者に返還し、住所不明となったような場合には供託の処理も行っている。また、年間を通じて、過誤納で収めた税金を納税者に返す場合の集計、支出処理とそのための現金管理なども行っている。

(2) 収納状況の把握と周知

日々の収納金と金額等の確認を行い、毎月の統計資料を作成し、納税課内各係及び総合支所税務係に配付して収納状況の把握と周知を行い、特別区税徴収実績調書として東京都及び特別区協議会に報告し、世田谷区財政課に四半期ごとの収入見込みの報告や決算時における税額の確定数値の報告を行っている。

(3) 納税事務の調整等

毎年、住民税の徴収計画を策定し、徴収目標を定め、徴収率の向上に向けて納税課内各係及び総合支所税務係との連携をとっているほか、納税・課税証明書発行事務についても、その事務の適正を維持するため、総合支所税務係及び同係を通じて出張所と調整を行っている。また、納税についての啓発や奨励の事務として、「税についての作文」を募集し、優秀作品を表彰したり、世田谷区広報誌やパンフレット等によるピーアール、納税貯蓄組合連合会活動への助成等の事務を行っている。

(二)  システム調整主査の行う事務について

納税課各係、総合支所税務係及び出張所の職員が電算システムをよく理解し、適正な運用を図り得るよう、担当の職員と連携をとって行う指示や教示、年度当初の人事異動者に対する端末機のオペレーション研修やオンラインの利用登録などの職員のシステム活用の支援、システムダウン時の連絡調整対応、端末機ごとの外字の追加管理などの機器の保守を行い、端末機・電算システムに関する一切を管理するとともに、効率のよい納税事務の遂行のためのオンライン処理とバッチ処理の年間スケジユールの組立てと毎月のスケジユール確認を行っている。また、納税課各係、総合支所税務係で統一されていない電算に頼らない部分の業務の進め方の中で、必要な情報を取り出すためのシステム改善を常に念頭に置いて、滞納整理対象者への対応が公平に行われるよう均一の電算システム情報を提供するといった事務を行っている。

(三)  収納係の職員が行う事務について

(1) 収納金の消込み

納税者が税金を納付すると、収納窓口の金融機関等から指定金融機関を通じて、現金は公金口座に振り込まれ、納付済通知書が収入役を経由して収納係に回付され、収納係の職員において、徴収台帳に消込処理を行う。世田谷区では、住民税の普通徴収分及び特別徴収分並びに軽自動車税の現年度分及び滞納繰越分を合わせて年間約一六〇万件余の納付済通知書をOCR(光学式文字読取機)と電子計算機を利用して磁気徴収台帳に消込処理を行っており、消込みされた磁気徴収台帳に基づき、督促状や催告書の送付が行われ、また、徴収猶予、差押え等の状況も記録され、滞納整理等にも活用されている。

収納金の消込みは、納税者の納付の状況を徴収台帳に記帳する徴収金債権管理の基本となる歳入管理事務であり、正確性と迅速性が求められるものであり、消込処理に当たっては、消込漏れや誤謬がないよ、に、徴収台帳と納付済通知書の課税番号、住所、氏名、税額、期別等の内容等を確認しながら行う必要がある。

(2) 普通徴収に関する督促事務

地方税法及び区税条例に規定された納期限を過ぎて税の納付がない納税者に、納税を促すために督促状を送付しているが、その数は、普通徴収の納期ごとに年間五回、延べ約一六万三〇〇〇通となっている。送付後の約七日間から一〇日間は、内容の確認、納付書の再発行、支払方法の照会、納税相談その他の納税者からの電話に対する対応に追われている。

(3) 過誤納金の処理

個人住民税の普通徴収や軽自動車税が、納税者の錯誤等によって誤って納税されたり、所得税の更正、還付申告及び賦課事務の誤り等の理由で税が減額され、又は取り消されて、納付されている税に過納が発生した場合には、納税者に還付するか、又は他の滞納税に充当する処理をしている。

消込処理及び税額変更処理を行うと、過不足該当者リストが出力され、端末機で還付又は充当をオンライン処理している。還付する場合には「還付(充当)通知書」と「還付請求書兼口座振替依頼書」を出力し、納税者に通知している。還付金の支払は原則として口座振替により行い、例外的に窓口での現金払いで行っている。口座振替による場合には、納税者から「還付請求書兼口座振替依頼書」が記入提出された後に納税者指定口座に振込をして支払っている。

(4) 口座振替事務

納税者の納付の負担軽減と税収確保の手段として、口座振替を実施し、約一万七〇〇〇人余が利用している。口座振替事務は、納税者と金融機関等との口座振替依額書による口座振替契約に基づいた金融機関等からの「口座振替納付届」を受理し、これに基づき口座登録入力して、納期ごとに口座振替請求の磁気テープ又は納付書を作成し、指定金融機関を経由して、各金融機関等に口座引落しを依頼している。納期限後は、金融機関等からの口座振替結果報告により磁気徴収台帳に消込処理を行い、振替が行われた納税者には、「口座振替済領収書」を送付し、振替不能納税者には督促納付書を送付している。

(四)  特別徴収係の職員が行う事務について

(1) 特別徴収

特別徴収は、事業所(法人又は会社等)の従業員を対象とした住民税の徴収方法であるが、特別徴収係の職員において、給与支払者(法人又は会社等)から送付される給与支払報告書に基づき年間税額を一二等分し、給与支払者に特別徴収税額通知書を送達し、給与支払者において、それに基づき、従業員の給与から控除し、指定期限までに指定金融機関に徴収金を納入するという方法により徴収されるものであり、特別徴収義務者数は二四万三〇〇〇余、特別徴収税額通知書の当初発行数は約六万件である。

世田谷区の公金口座に徴収金が振り込まれると、指定金融機関経由で納入済通知書が到着するので、これに基づき電算データに消込処理を行い、そのデータに基づき事業所の納税状況の管理を行い、未収納事業所を抽出し、督促状、催告書の発付又は電話催告等の対応を行っている。

(2) 特別徴収係の通年事務

特別徴収事務のほかに、特別徴収係においては、事業所が従業員の退職異動届を提出した場合には速やかに普通徴収の切替処理を行い、事業所の錯誤による納入、従業員の確定申告による調定額の変更がなされた場合には還付を行い、事業所の移転、社名変更が未届けの場合には担当職員が調査の上届出依頼をし、退職金の源泉分離課税など事業所の担当者が計算誤りのまま納入してくるような場合に指導を行うといった事務を行っている。

(五)  区外徴収係の職員が行う事務について

区外徴収係は、世田谷区から転出した納税者の税を徴収する職務を担っており、その件数は、平成一〇年度分約八万二〇〇〇件、滞納繰越分約六万五〇〇〇件である。また、他の地方自治体からの滞納者実熊調査の回答(年間約五一〇〇件)や世田谷区長を権利者又は義務者とする各種債権通知書の管理等も行っている。収納係及び特別徴収係による督促状送付後も納入がない場合には、順次表現を厳しくした文言の催告書を年一三回送付するが、区外徴収係が送付する一二万件の催告書のうち、一割以上は転居先不明で返戻され、連絡がついても、納税交渉に入る前に、地方税法の仕組みの説明に多くの時間を費やすことも多い。期限内に納付できない事情があれば、徴収猶予や分割納付の申出に柔軟に応じているが、完全に履行される例はほとんどなく、催告の繰り返しになり、結局滞納処分に移行する例が多い。差押財産の調査は、まず、住所から調べなければならず、住民票、戸籍附票、外国人登録、商業登記簿によるだけでなく、退職した会社への照会、臨戸の上での家主からの聴取などの手段によることもあり、その件数は、預金、不動産、電話加入権、給与等の調査も含めて年間一万三〇〇〇件にるのぼるが、プライバシーを理由に回答が拒否されることもあり、関係法規を説明し協力を求めなければならないこともある。しかも、差押えが直ちに納付に結び付くことは稀であり、これを交渉の端緒として、完納までに長期間を要する例が大半である。また、年に一回地方都市を拠点に、その近くに居住する高額滞納者、催告書に応答しない者、又は時効になりそうな滞納者を出張臨戸している。住所不明や財産がない者、生活を著しく窮迫させるおそれがあるときは、滞納処分の執行を停止している。

(六)  特別整理係の職員が行う事務について

特別整理係は、区外転出者を中心とした滞納額二五〇万円以上の高額滞納整理及び著しく徴収困難な案件の滞納整理、差押財産を換価し税に充てるための公売事務、各総合支所税務係とも連携した様々な滞納整理の調整事務を行っている。

(1) 高額滞納整理の基本は差押えを前提とした財産の調査と相手方との交渉にあるが、発見できる財産は限られ、仮に適当な財産を発見して、差押え等を行い、それを交渉材料として滞納者と交渉しても納付が実現できない例も多い。財産調査で換価可能な一定の財産がある場合、差押えに続く滞納整理の最終的な手段として電話加入権及び不動産の公売事務を行っている。

(2) 電話加入権の公売事務

差し押さえた電話加入権の公売について、各総合支所税務係や納税課内他係からの引継依頼を受け、手続に際して法的要件が具備されているか否かも具体的には、公売予告通知の有無、差押手続の適否、電算入力が厳正に行われたか否かを確認し、公売の可能性を判断し、差押要件等に疑義があれば公売不適として担当係に返却する。国税徴収法による公売公告をおおむね一か月前に行い、滞納者等に公売通知書を配達証明付郵便にて行い、返戻があると、差置又は公示送達をする。時間的に余裕のない場合には、特別整理係の職員が直接差し置くこともある。また、電話催告等の方法により納税勧奨を行い、連絡がとれない者や悪質な者については、公売日前日に見積価格公告を行うが、見積に当たっては、日本電信電話株式会社の協力を得て、未納料金調査を行い、これらのデータを基に価格算定の計算を行い、見積が確定すれば、入力等の作業に入る。公売当日は、一般競争入札により最高価の申込者を決定するが、入札室での運営、売却代金納付書の作成、売却決定に係る買受人や日本電信電話株式会社への通知作業を行うことになる。

(3) 不動産公売事務

事前準備として、各総合支所税務係及び納税課内他係からの物件の調査、引継を受け、特別整理係において、自主納付の可能性や他の納付方法などとも比較検討し、公売対象物件の選定を行う。その際、世田谷区への優先配当があるかどうかについて、それまでの経緯、滞納者からの事情聴取、関係権利者の問題なども加味して、様々な観点から検討を加える。公売物件の確定のためには、現地調査や関係権利者との折衝は不可欠であり、境界確定、実際の管理状況の確認、都市計画法等による法的規制なども慎重に調査することになる。

公売実施手続は国税徴収法で定められた手順で行うが、不動産の調査や鑑定評価を巡っては相当の専門性と習熟度が求められる。このようにして確定した案件につき、不動産鑑定額などを参考に見積価格を設定し、物件明細、公売案内書の作成を行う。入札の実施までに、入札準備や保証金の設定といった事務を行い、当日は、入札妨害に備えた準備を行っている。公売物件が入札されると、法務局への不動産登記嘱託事務を行う。

(七)  総合支所税務係の職員が行う事務について

総合支所税務係は、前記のような個人住民税の申告書の受付、原動機付自転車及び小型特殊自動車に係る届出の受理などの課税課関連の事務をはじめ、個人住民税、軽自動車税の収納及びそれらに係る延滞金の収納等を行うとともに、臨戸徴収や電話催告、差押え等の滞納整理、事務、税証明の発行を行っている。そのため、総合支所税務係には、地域における税務拠点として、多岐にわたる幅広い相談や苦情が持ち込まれており、それらに対応するために幅広い専門知識が必要とされている。

(八)  出張所の職員が行う事務について

出張所は、前記のような個人住民税の申告書の受付などの課税課関連の事務をはじめ、個人住民税、軽自動車税の収納及びそれらに係る延滞金の徴収、税証明の発行などを行っている。出張所は、区民に一番身近な行政窓口であり、税に係る相談や苦情が持ち込まれることが多くなっているために、税務事務を担当する職員には、専ら税務を所管する職員に準じる深い専門知識が必要とされている。

二  右事実及び前記課税課、納税課及び総合支所税務係の分担事務の内容に照らせば、課税課、納税課及び総合支所税務係の職員は、いずれも、特別区税の賦課徴収に専ら従事するものに該当し、出張所の職員は、特別区税の賦課徴収の事務に専ら従事しない兼務職員に該当し(特殊勤務手当規則二条、同別表)、課税課、納税課及び総合支所税務係の職員並びに出張所の職員が従事している特別区税の賦課徴収の事務の中には、統計、広報、部内事務の調整、研修関連事務等、その内容において通常の行政事務と著しい差がないと考えられる事務が存するが、その大半は地方税の賦課、徴収に密接に関連する事務ということができる。ところで、地方公共団体の事務の大半が住民に対するサービスの提供としての性質を有するのに対して、地方税の賦課、徴収等(地方自治法二条三項二一号)は、いずれも、法律、条例等により定められた厳格な手続、要件に従って広範な納税義務者に対して税負担を求め、最終的には納税義務者の財産から一方的かつ強制的にこれを徴収することにより地方公共団体の財政の基盤を確保しようとする点において、税負担の発生要件、その金額あるいは納付方法についての住民の疑問、不満が当然に予測されるのであって、これに対しては、窓口での受付又は調査に際して、各事案に応じた的確かつ適正な応答、教示を適時に行うことが必要となるのであり、納税義務者が広範であり、適用すべき法令が極めて専門性の高いものであることを考えると、地方税の賦課、徴収等に係る事務に従事する者は、税に関する法律、条例等に関する知識を涵養し、課税、徴税という一連の手続を理解した上で、慎重に事務を遂行しなければならないものというべきであり、この点において、特別区税の賦課、徴収の事務は、旧給与条例一三条一項が規定する著しく特殊な勤務に該当するものであるということができる。なお、右の観点に照らせば、納税管理係及びシステム調整主査の行う事務は、窓口での受付又は調査に際しての住民対応が予定されていない点で、他の部署の事務に比較して、右の特殊性が低いということはできるが、特別区税の賦課、徴収を合理的かつ円滑にするために必要な事務であり、税に対する専門的知識を必要とする点で、賦課徴収事務における著しい特殊性があるとした被告の判断に、これを違法とするまでの裁量権の逸脱、濫用があったということはできない。

そして、〔証拠略〕によれば、税務事務に携わる国家公務員については、一般行政職の俸給表に比べて、優遇された内容の税務職俸給表が適用されているが、「地方公務員の給与制度等の改正について」(昭和三二年六月一日自乙公発第五一号自治庁次長通知。〔証拠略〕)においては、税務職給料表は地方公務員に原則として用いないこととし、特別な給料表を用いない場合において必要があるときは、当該職の実態により、給料の調整額、特殊勤務手当又は資格基準において適宜措置し、給与の均衡を図ることが適当であるとされ、世田谷区においては、税務事務を担当する職員について、税務職給料表は用いず、一般行政職の給料表を用いていることが認められるところ、世田谷区程度の規模の地方公共団体の場合、税務職給料表のような特別の給料体系を採用することは、人事の円滑な実施を著しく困難にするものであることを合わせ考えると、税務事務は前記のような税務事務の特殊性を給料で考慮することが適当でないと認められるものに該当するものというべきであるから、本件手当は旧給与条例一三条一項の規定する特殊勤務手当の要件を充足するものということができる。

三  この点につき、原告は、個人住民税、軽自動車税の収納に口座振替が活用され、税務事務のオペレーションが、マニユアル化され、コンピユーター管理され、また、出張所にオンラインシステムが導入されていることからも特殊勤務手当の支給対象とされていない国民年金関係事務と比較しても、税務事務に特殊性、困難性はなく、出張所の職員に対する本件手当の支給は労働組合対策であると主張する。

しかし、原告が指摘する口座振替の活用、税務事務のマニユアル化、コンピユーター管理、オンラインシステムの導入は、事務の効率化、迅速化の観点から導入されたものであって、それによっても前記のような税務事務の特殊性が大幅に軽減されるというものではない。また、税務担当職員に対する本件手当の支給の根拠は、税務事務の特殊性にあるのであるから、国民年金関係事務と同一に考えなければならないものでもない。そして、出張所の職員に対する本件手当の支給が労働組合対策であると認めるに足りる証拠はないから、原告の右主張を採用することはできない。

(裁判長裁判官 富越和厚 裁判官 團藤丈士 水谷里枝子)

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